「宮型霊柩車」激減、その背景に「苦情」と「法規制」

日本古来の伝統的な意匠を凝らした「宮型霊柩車」が、この数十年でその姿を大きく減らしている。かつては葬儀の象徴として見送りの風景に溶け込んでいたが、現在ではその数は10分の1にまで激減したとされる。この劇的な衰退の背景には、住民からの「縁起が悪い」といった苦情や、法規制、そして社会の変化が複雑に絡み合っている。

住民からの苦情と火葬場の対応

宮型霊柩車が自宅近くを通ることに「縁起が悪い」といった苦情が近隣住民から寄せられるケースが増加したことが、衰退の主要な要因の一つとして指摘されている。これらの苦情は、自治体の火葬場が宮型霊柩車の乗り入れを禁止する動きにまで発展。中には条例でこれを制定するケースもあり、「信教の自由に反するのではないか」との疑問の声も上がっている。

法規制と維持コストの課題

さらに、法規制も宮型霊柩車の減少に拍車をかけている。2009年以降に適用された「外部突起規制」により、特徴的な装飾を持つ宮型霊柩車の新造が事実上不可能となった。既存の車両も年々老朽化が進んでおり、高額な製作費と維持費も相まって、新たな車両の導入が進まない状況だ。ある元葬儀関係者は、「宮型霊柩車とリムジン型を比較すると、9割がリムジン型を選ぶ。目立つことで喪主が気恥ずかしいと感じることも多く、料金も宮型の方が高かった」と語り、需要の変化を指摘している。

変わる葬送の文化と社会の反応

昔は霊柩車が通ると、人々が合掌したり、子どもが親指を隠したりする習慣があったが、現代ではそうした光景は稀になった。「今はサイレンを鳴らした救急車にも道を譲らない運転手がいる時代。霊柩車そのものが数年で消えるかもしれない」という意見も見られる。一方で、「宮型霊柩車は宮大工の技術と日本の文化の象徴であり、安易に『コスパが悪い』と切り捨てるべきではない」と伝統文化の消失を危惧する声も存在する。

一方で、日本で役目を終えた宮型霊柩車が海外で意外な形で再利用されている事例も報じられている。ミャンマーで軍事パレード用車両として使われたり、モンゴルで結婚式に利用されたりするなど、その独特の意匠が海を越えて新たな価値を見出されているという。

「仰々しい」と感じる声から、「自分の葬儀では宮型を使いたい」という希望まで、様々な思いが交錯する宮型霊柩車。その減少は、日本の葬送文化、ひいては社会全体の価値観の変化を映し出している。

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